2021年 12月 05日
eerie-eeryミニ個展【サナトリオムニミ~記憶のサナトリウム~】 |
TwitterとInstagramでは告知していましたが、Guignol様にてミニ個展を開催しておりました。
その事後報告をさせていただきます。
お越し下さった皆様、WEBSHOPをご利用下さった皆様、会場のGuignol様、誠にありがとうございました。
今回ちょっと長くなってしまいそうなのですがすみません。
個展の内容ですが、『サナトリオムニミ』という記憶のサナトリウムを舞台に、傷ついた記憶を治す過程を描いた展示でした。
ミニという形ではありますが、個展としましては2017年以来の開催でした。
いろいろと考えることもあり、制作ペースが落ちていましたが、この展示のお陰で少しずつ昔のといいますか、初心の感覚を取り戻していけたような気がします。
貴重な機会を下さったGuignol様、誠にありがとうございました。
では少しずつお話を書いていきます。
『院長の言葉』
修繕の手引き
此処は、壊れてしまった物語を修繕する「記憶のサナトリウム」
あなたの記憶をお直しします。
当院での修繕の流れをお話しします。
まず、初診の方は問診表に必要事項をご記入下さい。診察室にて診察を行います。
診察が済みましたら、部屋を移動していただき、「記憶の書き出し」を行う為の準備として「記憶の結晶化」を行います(通常5分程度で終わります)。
「記憶の結晶化」が始まると頭部が飴色に膨れ上がり、その中を記憶が泳ぎ始めます。5分と経たないうちに「記憶の結晶」が出来上がります。
硬化が完了すると「記憶の結晶」は簡単に頭部から外れます。不安とは思いますが、頭部は元通りになりますのでご安心下さい。勿論、痛みはありません。
次に「記憶の結晶」を元にあなたの記憶を一冊の本に仕立てます。これを「記憶の書き出し」と言います。
本には虫食いのように穴の空いた部分があるはずです。その部分があなたの物語の壊れてしまった部分にあたります。
当院には住み込みの技工士がおりますので、その穴にピッタリの結晶を見繕います。
結晶は分厚く、最初のうちは本を閉じることは困難でしょう。また、結晶を取り外した後の頭の形は不完全なままですので、暫く入院していただくことになります。結晶を外した頭は膨張をしたがるので、それを抑える為に入院の間はヘッドギアの装着をお願いしております。
頭の形が元に戻り、結晶が馴染んで本を閉じることができるようになれば退院です。
退院時には、ヘッドギアの代わりにお好きな形のヘッドドレスをプレゼントしています。ヘッドドレスは退院後も5日程度は着用して下さい。
あなたの物語の傷が回復し、これから紡がれる続編が幸せに満ちたものになりますように。 院長
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こんな感じの流れで記憶が修繕されるらしいです。
今回の物語には、このサナトリオムニミに訪れた患者の女の子たちと、サナトリオムニミで働く人々が出てきます。
詳しい物語は患者たちの日記として冊子(販売していました)にまとめて書いてあるのですが、長過ぎるので割愛します(Guignol様ではサンプルが読めるかもしれません)。
此処では短くまとめたものをキャプションとして載せていきます。
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『エレネ』
日々襲いかかる不安を断つ為にサナトリオムニミに来た女の子。
治療は始まったばかりでまだ不安が残る様子。
「全てのことを記憶し続けることが、忘れないでいることが、
果たして正しい行いなのだろうかというのは、常々思っていることだった。
忘れることこそが、他者への、己への、最後の許しなのではないか。」
椅子も頑張って木を削って作りました。大変だった・・・
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『イリニ』
記憶の本がぼろぼろで殆どの記憶を消すことになった女の子。
日記帳の中には、宛先の無い一通の手紙が残されていた。
「あなたのことを覚えていたのは、
あなたのことを思い出すことがなかったからなのかもしれません。
忘れないから、思い出す必要がなかったのです。
記憶の本にしまうことなくずっと、いつでも覚えているから。
あなたのその手が紡いだ世界が、
星になって永遠に多くの人々に愛されますように。
それは一等眩しくて何億年も輝き続ける強くて美しい星よ。」
記憶がほぼ無くなってしまったのに、どうしても忘れることがなかった記憶を持つ女の子です。
この子のベッドを作るのもとても大変でした。
ミニチュア作家さんって凄いんだなあ・・・
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『ネレイ』
双子の兄を亡くした記憶を治しに来た女の子。
ずっと涙が止まらず泣き腫らして目が真っ赤になってしまった。
兄を慕っていた記憶が僅かに残っているのか、年上のイリニに懐いている。
「ついに退院の日になった。退院する人はヘッドギアの代わりに
好きな動物のヘッドドレスをもらえるんだけど、わたしはうさぎにした。
かわいくて気に入ってる。早くイリニに見せたい。」
一番年下なのですが、大人びた顔立ちに仕上げたくて難儀した子です。
もう退院するので、修繕が完了した「記憶の本」を持っています。
以上の三人は、お洋服にも力を入れました。
どうしても同系色のコーディネートでキルティングベストを着せたくて、素材選びから試行錯誤を繰り返しました。
これから寒くなる時期だったので、ベストを作ってあげられてよかったなあと思っています。
ベストは直脱可能となっております。
続きまして、サナトリオムニミで働く人々を紹介します。
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『ドクター』
記憶の書き出し、記憶の結晶化、カウンセリング等の治療を行う。
「患者の記憶を人為的に忘却させることに否定的な意見も勿論ある。
だが乗り越えるのが困難な真実がある場合、それは患者にとって
敵となってしまう。極度の心的外傷は心を蝕み人生を挫く。
真実ばかりがいつも患者にとって正しいものとは限らないのだ。
世の中にある事象の殆どは知らなくて良いことだと思わないか。」
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『ナース』
患者達に寄り添い、経過観察と日記の点検を行う。
「きっとどうしたって忘れることはできないから、
向き合えるその日が来るまで、心が成長するのを待てばいい。」
ドクターとナースは、襟エプロン(そんなものは存在しないと思うがかわいいから作った)が着脱可能です。
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『技工士』
穴が空いた患者の物語に記憶の結晶を嵌め込む作業を行う。
「患者の記憶たちはどれも美しく輝いていて、いつもわたしに話しかけてくれる。
削り取られた記憶たちは、この部屋の中で新たな物語を紡ぎ始める。
いつか持ち主の物語に帰れるように、欠片は患者に渡すようにしている。」
このエプロンは、わたしが自分用に作ったエプロンと同じ布で作りました。
おそろです。
技工士が作業中に取っておいた患者たちの「記憶の欠片」も一つだけアクセサリーにしてお出ししていました。
『記憶の欠片』
記憶の結晶化によって出来た飴色鉱石を
技工士が削り出す際に出た患者たちの記憶の欠片。
本に収まらない『必要ない』とされた部分ではあるが、
いつか患者たちの物語に帰れるようにと
技工士がネックレスにしたもの。
分かりやすく記憶の欠片という題名にしてしまったけれど、イリニの物語でもよかったな・・・と思い始めています。
そして、今回一番反響があったのが、おくすりさんたち。
『おくすり』
嫌なことを考えそうになったら食べてくれるバクさん。
夜の夢の国から来たので、背中に星座を背負っています。
不安な時に手の中で優しく握ると安心します。
自分でもだいすきな比率の子が出来たなあと思いました。
作りながら動かして遊んでいたので、納品時が苦しかったです。
やっぱりぬいぐるみはかわいいな・・・
そして、この展示の物語を詳しく読み解く用に制作した患者たちの日記。
わたしが昔の個展で制作した音源を数曲まとめたものをCDにしておまけにつけました。
『カルテ 患者たちの日記』
サナトリオムニミでは、治療の一環として
患者の皆様に日記を書いてもらっています。
その中の一部を抜粋しました。
(今回のミニ個展の物語の詳細が載っています)
最後に、このミニ個展を開催するにあたり、個展テーマに込めた思いのようなものを会場にも置いていただいていたのですが、それを載せてしめさせていただこうかなと思います。
eerie-eeryミニ個展『サナトリオムニミ~記憶のサナトリウム~』について
今回のミニ個展では、『サナトリオムニミ』という記憶のサナトリウムを舞台に物語を展開させていただきました。
サナトリオムニミでの治療は所謂『忘却』です。
脳内で行われている『忘却』の工程を人為的に起こすというのが治療の主な内容です。
わたし自身が、何もかも怖くて何も出来なくなっていた頃、不安要素を忘れることが出来たら、
もしくは、気にしなくてよくなればもっと楽になるのになと思っていたことから、この記憶のサナトリウムが開院されました。
楽しいことや辛いこと、記憶には様々ありますが、それぞれの渦中にいる間は、その事柄や感じたことを
忘れようとしても忘れることが出来ないものです。
逆に忘れた時というのは、その事柄に対する執着から解放された時、または乗り越えた時であると思うので、
忘れるということは自分の心を守る為にある優しい機能なのではないかと思います。
じゃあ忘れないということはいけないのか、優しくないのかとなると思うのですが、それは違うなとも思うのです。
忘れるということが自分の心を守る為の機能だとすれば、その反対に、心を守ることを捨てたとしても忘れないでいることを選ぶのは、
信念の強さを伴う優しさの表れであると思います。
向き合い方は人によりそれぞれですが、『忘れること』と『忘れないこと』は同等に強く優しいことのようにわたしは感じています。
忘れても忘れられなくても、今日も記憶と共に生きているあなたの命は強くて優しくて尊いものです。
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はい・・・!
長かったですね、読んで下さった皆様、お疲れ様でした・・・!
いろいろ考え込んでしまって、気付いたらこんなことになっていました。
物語を詳しく書かない作品を作ったことも何度かあるのですが、物語を載せていない時にどんな物語があるのかというのを聞かれることが多いので、やっぱり書いた方がいいかなあとなって書くのですが、書くといろいろ書きたくなってどんどん長くなってしまうので、もう少しいい塩梅にまとめられるように精進します・・・
なんというか、生きているといろんな考えや記憶が付きまとっていて、それを材料にわたしたちは決断をしたり行動をしていくわけですが、
その記憶のせいであったりお陰であったりして、うまくいかなかったりうまくいったりしてまたその経験が記憶になって蓄積されていくじゃないですか。
なので、一見関係ないことを考えていたとしても、ふとした瞬間に紐付けされた記憶(良いものであっても嫌なものであっても)が引き出されてきてしまうのですよね。
そんなときに、このシステム何とかならないかな…と思っていたのです。
わたしはなるべく忘れて容量を開けて頭の中を軽くして生きたいと思っているのですが、嫌な記憶を忘れられないことも悪ではないということを受け入れられたら、という願いも込めて今回の個展の制作をしていました。
少しは頭の中を整頓できていたらいいなと思います。
記憶は生きていることに直結する血肉のようなものであるから、今生きている命を尊ぶことはその体に付随する記憶の肯定にも繋がると思っていて、
だから何が言いたいのかというと、
今生きているあなたは尊い存在だということ、計り知れないたくさんの記憶を自分の中だけにひっそりと携えて同じ時代に生きていてくれて本当にありがとうございますという気持ちを伝えたかったです(綺麗ごとでなく心から・・・!)。
辛いことの方が目立ってしまう昨今ですが、どうか生きていてほしいです。
とんでもなく長くなってしまいましたが、この辺りでしめさせていただきます。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
口下手ですみません。
では、この度も誠にありがとうございました◎
あなたの物語の続きが幸せに満ちたものとなりますように。
eerie-eery
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by eerie-eery
| 2021-12-05 22:59
| mono oki goya