2016年 02月 05日
【桃源の実験室アストマルシカの記録/手首のルシカ】 |
去年の個展作品を今更紹介するブログ。
本日最終回となりました。
長々とお付き合いありがとうございました。
漸く去年の分を紹介しきれそうです笑
最終回の本日は【手首のルシカ】です。
昨日紹介した【秘密を守る標本箱】の中の鍵で主人公は秘密の書斎に入ります。
【手首のルシカ】
秘密を守る標本箱の中の鍵を開け、書斎に入ると現れた手首の壁掛け
私にこの実験施設の謎を教える為の最後の物語を渡してくれる
寄ってみました。この角度がベストです。
左手にした理由はわたしが元々左利きだったということもあり、わたしの作品には他でも使ったりよく出てきます。
左手について、女性的であることや神聖だったりいろいろ説もあります。
自分の生まれ持っていた性質と、いろいろな話等を受けて、知らないうちに自分の中で左手が特別なものになっていたのかもしれません。
また、お客様からも左手について素敵なお話を聞いたりして、知らなかったのですがそういった偶然をとても嬉しく思いました。
さて物語に戻ります。
いよいよ【手首のルシカ】が主人公に渡した手紙の内容が明らかになります。
どんな事が書かれていたのでしょうか。
長くなりますが、読んで頂けると嬉しいです。
手首のルシカから渡された手紙の内容はこうだ。
『此処までよく辿り着いてくれましたね。ご苦労様でした。
この手紙を読んでいるという事は、貴方は既にこの実験施設アストマルシカの正体に気付いていると言っても過言ではありません。
少し説明をしましょう。
私は命の生成と継続について様々な研究をしてきました。
そしてその途中である事に気が付いたのです。
生み出した機械達全てが何らかの係わり合いを持ち繋がってくる事。
何か一つだけでは無く沢山の材料が必要だという事。
そしてそれら全ての共通点は貴方だという事。
この実験室アストマルシカは貴方を形作る装置であり宇宙なのです。
貴方の命には沢山のものが係わっています。
貴方一人きりでは成り立ちませんでした。
沢山の材料が必要だったのです。
分かりやすく例えるならそうですね、例えばクッキーを作る時、色んな材料が必要になります。
小麦粉、バター、玉子や砂糖等。
また形や味はどうでしょう。
丸や四角や星の形。ココア味、紅茶味と個性も出せます。
貴方の場合も同じです。
身体を作る材料や性格を作る材料。
骨や肉や歯や髪の毛。
好きな歌、好きな匂い、嫌いな食べ物、嫌いな色。
家族、友人、恋人。
様々な物が係わり合って貴方が出来上がるのです。
そしてそれは貴方が自覚出来る物事だけに留まりません。
貴方が全く関係無いと思っていた所の物事も係わっていたりするのです。
貴方は貴方という宇宙の中で、様々な星達と係わり合い生きているのです。
そしてそれは貴方がその一生を終えた後も続いていくのです。
この星が生まれ、今日までその命達が続いている様に』
手紙を読み終わり、余りにも壮大な話に私は呆然としてしまった。
なんと、命を作り上げ継続させる実験を行っていたアストマルシカは、私を作り、そして世界へ繋げる装置であったのだ。
私は書斎から出て実験室の装置達をもう一度見て回った。
初めて訪れた見知らぬ施設であるのに、何故か落ち着くと思っていたこの感情は間違いではなかったのだ。
空想の物語に出て来る様なアストマルシカの装置達はまるで私の頭の中の世界であった。
執筆の際に使うペン先、子供の頃に庭で拾った石、暗号や宝探しの様な今回の旅までも。
全て私を形作った私に纏わるものであったのだ。
私が存在する事でこのアストマルシカが成立する。
そして私もまた他の誰かのアストマルシカを作り上げる事に係わっているのだろう。
そうして私は私という体が死んだ後もこの星の一部として永遠に係わり続けるのだ。
それは今生きている全ての者達にも言える事である。
そして、読者である貴方にもきっと、貴方だけのアストマルシカが存在しているはずだ。
銀河系の中のほんの小さな星の様に
途切れる事の無い命の連鎖の様に
全てを繋ぐ物語の中に私は生きている
長々となりましたがこれで今回の物語【桃源の実験室アストマルシカの記録】は終わりです。
どんな人も、ものも、独りきりでは成り立たない。
いろんなものが複雑に混ざり合って出来ている。そして存在している。
そんな事を言いたかった物語でした。
ここまで生きたのはわたしひとりの力ではない。この体はわたしひとりの体ではない。
そう思った時に、全てのもの達に感謝し、この奇跡の連続に涙が溢れました。
だからもう寂しくないです。そう思うようになりました。
これを読んで下さった誰かに、展示で何かを感じて下さった誰かに、
あなただけの素晴らしい連鎖と奇跡がある事が、優しさとして寄り添いますように。
改めまして、この度は(もう去年の事になりますが)展示を見て頂き、長々とブログも読んで頂き、誠にありがとうございました。
またイベントや展示のお知らせをしていきますので気長に見守って下さると幸いです◎
またみてね(・ξ・)つ◎
eerie.
by eerie-eery
| 2016-02-05 23:30
| mono oki goya